司法書士の業務

司法書士試験は法務省所管の国家資格です。司法書士は業務独占資格なので、司法書士の業務は司法書士の資格を有し、司法書士会に入会・登録した者しか行うことが出来ません。

 ほとんどの人は司法書士という言葉を聞いたことのあると思いますし、中には司法書士に仕事を依頼したことがある人もいるかもしれません。しかし、司法書士の業務を正確に把握している人は意外と少ないのではないでしょうか。司法書士の業務について簡単にまとめてみましょう。司法書士に許される業務は近年大幅に増加し、司法書士の活躍できるフィールドが拡大しているのが分かると思います。

 司法書士の第一の業務は「登記・供託業務」です。この「登記・供託業務」が司法書士の従来からのメインの業務です。登記とは実社会において非常に重要な位置をしめているものです。たとえば、土地の登記が間違っていたら、下手をすると土地を失ってしまいかねません。その意味で、依頼者の人生を左右するような、間違いが絶対に許されない重要な業務です。登記には、土地などの不動産登記のほか、会社設立などの商業登記があります。司法書士は、勿論その双方を業務として行うことが出来ます。供託もまた重要な意味を持っています。供託とは、金銭などの財産を国家機関である供託所に提出して管理してもらう制度です。金銭などを供託所に預けることで、弁済などの法律効果が発生します。供託には何種類もあるのですが、一番分かりやすいのが、弁済のための供託なので、それを例に簡単に供託について説明します。家の借主が貸主に賃料を払おうとしまが、貸主が受け取ってくれません。受け取ってくれないからといってそのまま放置しておくと、賃料不払いを理由に契約を解除され追い出されてしまいかねません。それを防ぐために、賃料を供託します。賃料を供託すると賃料を支払ったことになり、賃料不払いを理由に家を追い出されることもなくなります。この賃料の弁済供託は結構利用されています。このような供託も司法書士の重要な業務のひとつです。

 司法書士の第二の業務として、成年後見業務があります。成年後見制度とは、かつて禁治産制度、準禁治産者制度と呼ばれていた制度を人権に配慮して改善した制度です。一言で言うと、知的障害者、精神障害者など、成年者で判断能力が不十分な人をサポートする制度です。判断能力が不十分な人が、金銭を借りてしまったり、不動産を売ってしまうと、本人にとってもマイナスです。そこで、本人に代わって財産を管理したり、本人がしてしまった売買契約を取り消したりして、本人を守ることが必要になってきます。そのための制度が成年後見制度です。司法書士は家庭裁判所の選任や後見契約によって、成年後見人になることが出来ます。なお、成年後見については、一定の訓練や研修を受けた司法書士で構成される、社団法人 成年後見センター・リーガルサポートが1999年に設立されています。ここでした後見制度の説明はあくまで司法書士に後見業務があることを紹介するためのものです。成年後見制度について詳しく説明するための文章ではないことをご了承ください。

 ここまでの業務は、どちらかと言うと紛争が起こらないように事前に手続きをしたり、調整する業務です。たとえば、登記を業務として行うことの出来る司法書士が不動産売買に立ち会って、不備がないか確認したり、移転登記を間違いなく行うことによって、紛争が起こるのを未然に防ぐことが出来ます。紛争やトラブルが起きてから、それを解決する司法書士と弁護士との大きな違いです。しかし、現在では司法書士にも、一定の範囲内ではありますが、紛争を解決する業務も認められています。2003年から司法書士に簡易裁判代理権が付与されたのです。訴額(一言で言うと、訴訟の目的となっている金額です)140万円以下の訴訟に限られていますが、簡易裁判所における訴訟で、代理人として法廷に立ち、弁護活動ができるようになりました。勿論、訴訟だけでなく、簡易裁判所における事物管轄を範囲内とする調停、即決和解等の代理、法律相談、裁判外和解の代理も行うことができます。なお、司法書士が簡易裁判所訴訟代理権を取得するためには、司法書士試験に合格するほか、簡裁代理能力認定考査に合格する必要があります。資格試験予備校のなかには簡裁代理能力認定考査合格のための講座を設けているところもあります。
 
 司法書士の業務を独立開業することを前提に概観してきましたが、司法書士は開業するだけではなく、企業に就職し、企業法務の分野で活躍することも可能です。

関連サイト:日本司法書士会連合会
http://www.shiho-shoshi.or.jp/index.html

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