行政書士の業務
テレビドラマにもなったコミック『カバチタレ!』などで行政書士もすっかりおなじみになりました。ほとんどの人が行政書士という言葉を耳にしたことがあると思います。しかし、行政書士がいったいどんな仕事をしているのかを知っている人はそう多くはないかもしれません。行政書士にはいったいどのような業務があるのでしょうか?
行政書士の業務には、第一に官公署への提出書類を作る「書類作成業務」があります。作成できる書類は数多く、10,000点以上とも言われています。たとえば、会社設立、各種契約書、内容証明、示談書、建設業許可関係書類、風俗営業関係書類、外国人登録、出入国手続関連の書類、遺言書などを作成することが出来ます。これらの書類は自分でも作成できないものではないですが、専門的な知識をもっていないと作成が難しく、作成に手間取ったりしてしまいます。しかも、万一間違いがあったら大変です。そこでも本人に代わって、これらの重要書類を作成するのが、行政書士の「書類作成業務」です。
これまでは、この「書類作成業務」が行政書士の業務のメインだったことは間違いないでしょう。しかし、現在の行政書士の業務は「書類作成業務」に限られません。かつて「代書屋」と呼ばれていたこともあり、行政書士のイメージはどうしても、「書類作成業務」に偏ってしまいがちですが、行政書士の業務は「書類作成業務」以外にもいくつもあるのです。むしろ、「書類作成業務」は行政書士の業務の一部に過ぎない位置付けになってきています。「書類作成業務」以外の行政書士の業務も見ていきましょう。
行政書士の第二の業務として、「書類提出手続や契約書作成の代理業務」があります。平成14年7月からは行政書士に代理権も認められるようになりました。許認可申請手続きの代理権、契約書作成の代理権が認められることになり、たとえば、行政書士が本人を代理して官公署に対して許認可申請手続きなどを行うことが出来るようになりました。
代理権が与えられたことによって、行政書士の業務は飛躍的に増大しましたし、行政書士に対する社会的信頼も向上したと思います。代理権が与えられたことの意味を簡潔に説明するのは難しいのですが、端的に言うと、代理権を持った代理人は代理権の範囲内ではかなりの権限を持っています。厳密にはちょっと違うのですが、代理人は代理権の範囲内では本人と同じくらい自由に行動できるのです。代理権を与えられたとことによって、行政書士の権限が増し、行政書士の出来る業務が増えたと言えるでしょう。
第三の業務として、書類の作成についての相談を受けたりする「相談業務」があります。『街の法律家』として、書類の作成等の相談に応じたり、提案していく業務です。行政書士に「相談業務」が認められしているため、行政書士は書類を作成しなくても依頼者に「相談料」を請求することが出来ます。コンサルティングの相手には個人だけでなく、法人も含まれます。許認可等の申請書類を作成するだけでなく、相談に乗ったり、提案したりしていけるのです。今後、このコンサルティング業務の重要性は増していくと考えられます。コンサルティング業務をメインにしている行政書士も増えつつあるようです。ちなみに、日本行政書士会連合会のHPのトップページには、『あなたの街の法律家』という言葉が掲げられています。
このように、かつては『代書屋』などと揶揄されることもあった行政書士の業務は、現在では『代書』という言葉では言い表せないほど多岐に渡っているのです。しかも、今後の司法制度改革の行方次第では行政書士に許される業務がさらに拡大する可能性もあります。特に、ADR(裁判外紛争処理)での行政書士の活用などが期待されています。紛争発生後に紛争を解決するのは主として弁護士の業務ですが、紛争発生後の解決だけが重要なわけではありません。和解や仲裁など、紛争発生前に予防的に紛争を解決するなどの裁判外紛争処理においても、行政書士が活躍する可能性があるのです。
行政書士の業務と関連して、もうひとつ特筆すべきことがあります。2004年8月から行政書士法人の設立が可能になったのです。このことによって、行政書士法人を経営するというという可能性も生まれました。先ほど書いたように、行政書士の作成できる書類や業務は多岐に及んでいますが、一人でそれら全てに精通することは不可能でしょう。しかし、得意分野を持つ行政書士を何人も集めて行政書士法人を設立することによって、あらゆる分野のニーズに対応できる総合的な行政書士法人を経営することも可能になります。
また、行政書士法人の設立が認められることによって、行政書士が行政書士法人に就職することも可能になります。行政書士試験合格後の進路として、自分で事務所を開くという選択肢のほか、行政書士法人に就職するという選択肢も生まれたのです。行政書士の法人化は始まったばかりなので何ともいえませんが、将来的には、資格取得後にいきなり事務所を開くのではなく、まずは行政書士法人に就職し、勤務しながら事務所経営のノウハウを学んでから、独立開業を目指す人が増えるかもしれません。
このように、行政書士は以前では考えられなかったほど、魅力的な資格になってきましたし、今後は更に魅力的な資格になっていく可能性も秘めています。
ここまで様々な行政書士の業務を紹介してきましたが、行政書士は業務独占資格なので、資格を持っている人しか行政書士の業務を行うことはできません。
関連サイト:日本行政書士会連合会
http://www.gyosei.or.jp/