新司法試験と旧司法試験の比較

平成18年度(2006年)から新司法試験が行われ、今までとは全く異なる試験が行われます。世紀の大改革と言っていいほど、旧司法試験と新司法試験は全く異なります。なお、ちょっとややこしいかもしれませんが、しばらくの間は、旧司法試験も並行して行われます。そこで、平成18年度から始まる新制度の司法試験を新司法試験、従来と同様の形式で行われる試験を旧司法試験と呼んでいます。

 それでは、新司法試験について、旧司法試験と比較しながら概観してみましょう。

 まず、受験資格に大きな変更がありました。受験資格者は受験時に法科大学院(ロースクール)の課程を終了している者です。従って、2年または3年間のロースクールの課程を修了しない限り、司法試験を受験することは出来なくなってしまいました(2011年までは暫定的に旧司法試験の枠も残されています)。旧司法試験には受験資格がありませんでしたから、とても大きな変化です。

 更に、受験制限があります。新司法試験は3回しか受けることが出来ないのです。3回受けても合格できないと受験資格を失い、受験出来なくなってしまうのです。ロースクールを卒業したものの実力が伴っていないと判断した場合、受験を可否することも可能です。しかし、その場合でも、ロースクール卒業後5年を経過してしまうと受験資格を失ってしまいます。つまり、5年間で3回までという厳しい受験制限があるのです。なお、一旦受験資格を失ってしまうと、予備試験に合格しない限り司法試験を受けることが出来なくなってしまいます。

 また、試験の態様も大きく変わりました。旧試験では、まず、5月に択一試験が行われました。択一の合格者だけが7月に論文試験を受けることができました。論文試験に合格した人は更に口述試験を受け、口述試験に合格すると晴れて司法試験最終合格者になれるという、長丁場の試験でした。新司法試験では、5月に短答試験と論文試験が同時に行われ、最終合格者が決定します。口述試験は廃止されました。5月に、日曜の休みを挟んで計4日間の試験が行われます。合計で22時間のハードスケジュールになります。

 平成18年の日程を例に取って試験日程を紹介します。1日目の午前中には短答式の民事系科目2時間30分、1日目の午後には短答式の公法系科目2時間30分 短答式の刑事系科目1時間30分の試験が行われます。2日目の午前中には論文式の選択科目3時間、午後には論文式の公法系科目4時間の試験が行われます。日曜はお休みです。3日目の午前中には論文式の民事系科目第一問2時間、午後には論文式の民事系科目第二問4時間の試験が行われます。4日目には午後に論文式の刑事系科目4時間の試験が行われます。

 注意する必要があるのは短答式の扱いです。旧司法試験では択一式試験は論文試験のための予備試験の位置付けでした。41点で合格しようが、60点で合格しようが、論文式試験ではゼロからの勝負でした。新司法試験でも、短答式試験で一定点数に達しないと足切りされるのは今までと同じです。しかし、新司法試験では、最終合格についても短答式と論文式の総合点による評価で決定されます。つまり、短答式試験が、単なる足切りの道具としてのみ使用されるのではなく、最終合格に大きくかかわってくるのです。これまでのような論文を中心に勉強し、短答式試験の前だけ短答(択一)対策をするのでは通用しなくなる可能性があります。また、論文式試験の時間が長くなっているのも見逃せません。長時間でじっくり解くような問題が出題されるかもしれません。

 試験科目にも変更がありました。旧司法試験は択一式が憲法、民法、刑法の三科目で、論文試験が憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法の六科目でした。従来は択一と論文の双方が受験科目になっている憲法、民法、刑法を中心に勉強するのが基本でした。新司法試験では短答式(択一式を含む)が、公法系(憲法、行政法に関する分野の科目)、民事系(民法、商法、民事訴訟法に関する分野の法律)、刑事系(刑法、刑事訴訟法に関する分野の法律)の三分野からの出題になります。短答式試験に行政法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法等が加わったのが大きなポイントです。新司法試験では、広い法分野を満遍なく勉強しなくてはならなくなったのです。
 
 新司法試験では論文式試験も大きく変わりました。旧司法試験では、憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法から出題がありました。 新司法試験では、公法系科目、民事系科目、刑事系科目、選択科目から論文試験が出題されます。これまでのような憲法、民法と言う独立した法文野からの出題ではなく、公法系科目、民事系科目というような総合的な問われ方をすることになりました。論文試験のもうひとつの特徴は選択科目があることです。選択科目は、倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法(公法系)、国際関係法(私法系)の8科目からの選択になります。選択科目が出来たことでこれらの科目も勉強する必要が出てきました。なお、選択科目は願書に記載しなくてはなりません。願書提出時までにどの科目を選択するか決めておく必要があります。

 新司法試験で実際にどんな試験が出題されるかは何ともいえませんが、2005年8月6〜9日に法務省・司法試験委員会が中心になって行われた「新司法試験プレテスト」が目安になります。予備校の模擬試験や答案練習会もプレテストを参考にして問題が作られると思われます。プレテストについては法務省の資格試験・採用試験のページで知ることが出来ます。

 出題形式及び問題別配点、採点及び成績評価等の実施方法・基準、論文式試験の答案用紙の配布枚数及び短答式試験問題の配点の公表、論文式試験答案用紙(サンプル)、Q&A、試験問題、短答式試験結果、論文式試験出題の趣旨、論文式試験の結果及び総合評価などを見ることが出来るので参考にしてみてください。

合格者の数も変わります。新司法試験の合格者は初年度こそ1000人前後ですが、翌年には2000人程度に増加します。そして最終的には合格者数は3000人程度になることが予定されています。よく「法曹3000人時代」が到来すると言われるのはこのためです。

 なお、新司法試験とは直接関係ありませんが、新司法試験導入に伴って、司法試験合格後に行われる司法修習の期間も短縮されることになりました。

 新司法試験についての詳細は法務省の資格試験・採用試験のページをご覧ください。
http://www.moj.go.jp/SHIKEN/

司法試験の一覧へ
法律系資格で生きる!のトップページへ